餃子は、実は「タレの料理」です。ビールとワインを分解して考える話

先日、ワインイベントで登壇する機会がありました。産地の話をして、ペアリングの話をして、質問にも答えて、なんとか役目を終える。ようやく緊張がほどけた帰り道です。
頭の中に浮かんでいたのは、「ギョウビー」でした。

餃子とビール。サラリーマンの心のオアシスです。イベントでは散々ペアリングの話をしていたのに、結局こうなる。ワインの仕事をしていても、理性より炭酸が勝つ日はあります。

実際、餃子とビールは強い。
でも、なぜ合うのかと聞かれると、意外と説明が難しい。「脂を流すから」。もちろんそれもあります。ただ、餃子のおいしさって、それだけではないんですよね。

パリッと焼けた皮。豚肉の旨味と脂。ニラやにんにくの香り。そして酢醤油。
餃子は、思っている以上に複雑な料理です。

だから今日は、一度ギョウビーへの愛を認めたうえで、少しだけ理性を取り戻してみようと思います。本当に餃子と相性を決めているのは何なのか。そして、もしワインを合わせるなら、どこを見ればいいのか。

餃子を少しだけ分解して考えてみます。

この記事を書いた人

Aoあお|Tableside Notes

ワイン輸入バイヤー・ブランドマネージャーとして、生産者やレストランと関わってきた経験をベースに、ワインのある食卓やライフスタイルを発信。

シャンパーニュから深夜のパスタまで、“背伸びしすぎない上質”をテーマにしています。

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目次

まずは餃子を分解してみる

餃子の相性を考える時、つい「豚肉料理」として見てしまいます。でも実際においしさを作っているのは、もっとたくさんの要素です。

餃子の要素役割
豚肉旨味
コク
焼き目香ばしさ
ニラ・にんにく香り
酢醤油酸と塩味
ラー油辛味

こうして見ると、餃子って意外と忙しい料理なんですよね。しかも面白いのは、ワインとの相性を決めるのが豚肉だけじゃないこと。

むしろ、焼き目、香味野菜、タレ。このあたりがかなり重要だったりします。

餃子は、実はかなり「焼き目の料理」

餃子を食べる時、最初においしいと感じるのはパリッと焼けた皮かもしれません。
あの香ばしさには、ちゃんと理由があります。

小麦粉の糖と、肉や皮に含まれるアミノ酸が熱によって反応する「メイラード反応」です。
少し難しく聞こえますが、パンの耳や焼いた肉がおいしい理由とほぼ同じ。

つまり餃子って、かなり「香ばしさを食べる料理」なんですよね。
だからビールの苦味が合う。だから熟成した泡のトースト香も合う。

焼き目を見ていくと、実はワインとの接点も見えてきます

ビールが強いのは、「脂を流す」だけじゃない

餃子とビールの相性を語るとき、よく出てくるのが「脂を流すから」という説明です。もちろん、それは正しい。

豚肉の脂は口の中に残りやすいので、炭酸が入るとリセットされた感覚があります。でも実際は、それだけではありません。

餃子にはニラやにんにくの強い香りもある。炭酸は脂だけでなく、その香りも一度整理してくれるんです。だから次の一口が、またちゃんとおいしい。

さらにビールの苦味は、餃子の焼き目とも自然につながる。考えてみると、ビールってかなり働き者なんですよね。

餃子の要素ビールの役割
豚脂炭酸がリセット
焼き目苦味がつながる
にんにく・ニラ炭酸が整理する
塩味麦芽の甘みが受け止める

そりゃ強いわけです。

餃子は、実は「タレの料理」

餃子って、豚料理として語られることが多いです。
でも実際に相性を大きく動かしているのは、酢醤油だったりします。

酢を多めにするか。醤油を強くするか。ラー油を入れるか。それだけで必要な飲み物がかなり変わる。

だから餃子は、「豚料理」でもありながら、かなり「タレの料理」なんですよね。

オススメワイン:基本の酢醤油餃子なら、白ワインが意外と入る

酢醤油で食べる王道の焼き餃子。この場合は、思っている以上に白ワインが合わせやすいです。

ワインタイプなぜ合う?
ミュスカデロワール河口・辛口白塩感と酵母感
アルバリーニョリアス・バイシャス・辛口白柑橘と酸
リースリングアルザス・辛口白香りと酸のバランス

特にロワールのミュスカデはかなり優秀です。
海の近くで造られることもあって、どこか塩っぽいニュアンスがあります。酢醤油の塩味と自然につながるんですよね。
しかもシュール・リー由来の軽い酵母感が、餃子の焼き目とも意外と相性が良い。

リアス・バイシャスのアルバリーニョもおすすめです。
レモンを絞りたくなる料理に合うように、酢醤油餃子とも自然につながる。餃子の日に一本選ぶなら、かなり安心感があります。

オススメワイン:しそ餃子になると、急に爽やかになる

しそが入ると、餃子は少し別の料理になります。豚肉や焼き目よりも、青さやハーブ感が前に出てくる。

こうなるとおすすめは、ロワールのソーヴィニヨン・ブラン。特にサンセールやプイィ・フュメです。

ソーヴィニヨン・ブランが持つハーブや柑橘のニュアンスが、しその香りとかなり近い。しそ餃子って、少しサラダっぽいんですよね。

だからワインも爽やかな方向が合います。

▶ソーヴィニヨンブランの香りについプロ目線で専門的に知りたい方はこちら
 └記事:ソーヴィニヨン・ブランの香り「3MH」とは?サンセールとNZの違いを解説

オススメワイン:ゆず胡椒餃子は、日本ワインも面白い

ゆず胡椒を添えると、急に和柑橘の世界になります。
こうなると、アルバリーニョはもちろんですが、甲州もかなり面白い。

甲州って派手なワインではありません。でも、和柑橘との距離感が近い。

ゆず胡椒餃子になると、急に日本ワインの居場所ができるんですよね。

トッピング合わせたいワイン
しそロワールのソーヴィニヨン・ブラン
ゆず胡椒甲州、アルバリーニョ
ラー油タヴェル・ロゼ
黒酢ボジョレー、軽めのピノ・ノワール
黒胡椒ガメイ、冷やしたピノ・ノワール

オススメワイン:ラー油餃子なら、ロゼという選択肢

ラー油をしっかり使うなら、ロゼも面白いです。特に南ローヌのタヴェル。

ロゼとしては比較的しっかりした造りで、餃子の脂にも負けません。
辛味を消すというより、果実味で受け止める感覚です。

ビールとはまた違う楽しさがあります。

オススメワイン:赤ワインなら、「黒い要素」を足したい

普通の餃子に赤ワインは少し難しいです。特に重たい赤。

ニラやにんにくとぶつかって、ワインだけ浮くことがあります。
でも、黒酢、黒胡椒、焦がし気味の焼き目。この辺が入ると景色が変わる

すると赤ワインの居場所ができます。

おすすめはボジョレーのガメイ。軽やかで果実感があり、餃子の香味野菜とも喧嘩しにくい。

アルト・アディジェあたりの軽やかなピノ・ノワールも良いです。

少し冷やして飲むと、焼き目との相性がかなり良い。

赤ワインって、餃子そのものより、「餃子の焦げ」に反応している気がします。

オススメワイン:実は、ギョウシャンも結構強い

もし予算を気にしなくていいなら、少し熟成したシャンパーニュもかなり面白いです。

酵母由来のブリオッシュ香。餃子の焼き目。実はどちらも「香ばしさ」の仲間なんですよね。

長く熟成したシャンパーニュのトースト香が、餃子の焼き目と妙につながる。

ギョウビーは強い。でも、ギョウシャンもなかなかです。

▶関連記事:
 ・開けたスパークリングワインは何日もつ?炭酸を逃がさない保存法と便利グッズ
 ・スパークリングワインの保存方法|開けた後に泡を長持ちさせるコツ

結局、来週もギョウビーだと思う

餃子って、見た目は全部同じです。
でも実際は、焼き目、脂、香味野菜、タレを少し動かすだけで、必要な飲み物がかなり変わる。
だから餃子は、「豚料理」というより、“タレを編集する料理”なのかもしれません。

来週もまた出張があります。その頃には、この記事で散々ワインの話をしたことも忘れて、たぶん駅前の餃子屋に入っている気がします。

そして最初の一杯を飲んで、たぶんこう言うんですよね。

「やっぱり、ギョウビーは強い。」

それでも餃子を少し分解してみると、ワインが入る余地もちゃんとある。

だからペアリングって面白いんだと思います。

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この記事を書いた人

ワイン業界の視点から、
食卓・シャンパーニュ・上質な道具を通して、
「少し良い暮らし」を発信しています。

ワイン輸入バイヤーやブランド業務を通じて、世界各国のワイナリーやレストラン、ショップ、イベントに長年関わってきました。

その中で感じたのは、
ワインは“難しく学ぶもの”というより、
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