うなぎを分解するワインの話
土用の丑の日が近づくと、町中にわかにうなぎの看板でにぎわいます。
漂ってくる香ばしいタレの香りをかぎながら、
「あ、ビール飲みたい。」
そう思ったことがある方は多いのではないでしょうか。私もその一人です。
でも、なぜ私たちは、うなぎを見ると自然とビールを思い浮かべるのでしょう。
そして、日本酒が定番なのはなぜなのか。
さらに、実はワインとも驚くほど相性が良いのはなぜなのか。
今回は、うなぎを少しだけ「分解」しながら、その理由を紐解いてみます。
この記事を書いた人

Aoあお|Tableside Notes
ワイン輸入バイヤー・ブランドマネージャーとして、生産者やレストランと関わってきた経験をベースに、ワインのある食卓やライフスタイルを発信。
シャンパーニュから深夜のパスタまで、“背伸びしすぎない上質”をテーマにしています。
解析度①|うなぎは「魚料理」ではない
うなぎの蒲焼を魚料理として考えると、お酒選びは少し難しくなります。
なぜなら、主役は魚だけではないからです。
うなぎを分解すると、見えてくるのはこの3つ。
- 脂
- 甘辛いタレ
- 炭火の香ばしさ

だから、お酒にもそれぞれ得意分野があります。
ビールは脂を流す。日本酒は旨味を重ねる。
ワインは料理全体をつないでくれる。
つまり、うなぎは「魚に何を合わせるか」ではなく、
料理のどの要素を楽しみたいか
でお酒を選ぶ料理なのです。
解析度②|ロゼワインが一番自然な理由
では、ワインなら何が合うのでしょう。
私がまずおすすめしたいのは、
少し骨格のあるロゼワインです。
うなぎは魚でありながら、肉料理のような脂があります。
そこへ甘辛いタレが重なり、さらに炭火の香ばしさが加わる。
白ワインだけでは少し細く感じることがあります。
一方で、しっかりした赤ワインではタンニン(渋み)がタレとぶつかることもあります。
そのちょうど真ん中にいるのがロゼです。
白ワインの爽やかさ。赤ワインのほどよい厚み。その両方を持つロゼは、うなぎの複雑さを自然につないでくれます。
私ならスーパーで蒲焼を買った日には、まずロゼを選びます。
例えば、
- タヴェル(ローヌ)
- バンドール(プロヴァンス)
- 南フランスのグルナッシュやシラー主体のロゼ
このあたりは、脂にも、タレにも、炭火の香りにも無理なく寄り添ってくれます。

解析度③|何を主役にするかでワインが変わる
ここから少しだけ、プロの視点です。
実は、「うなぎに合うワイン」は一つではありません。
何を主役にしたいかで選ぶワインが変わります。
全体のバランスを楽しみたい
まずおすすめなのは、やはり少し骨格のあるロゼ。
脂、タレ、炭火。
どれか一つではなく、料理全体をきれいにまとめてくれます。
炭火や香ばしさを楽しみたい
炭火の香ばしさを主役にするなら、軽やかな赤ワインが面白くなります。
例えば、
- ボージョレ(フルーリーやモルゴン)
- 軽やかに仕立てたグルナッシュ
- サンソー主体の赤ワイン
渋みで押すのではなく、果実味や香りで寄り添うイメージです。
少し上品に楽しみたい
タレが控えめだったり、繊細な印象の蒲焼、白焼きなら、樽香を抑えたシャルドネも選択肢になります。
マコンやサン・ヴェランのような、果実味とミネラル感のバランスが良いスタイルがおすすめです。
山椒をかけたら?
ここで面白いのが山椒です。
山椒を振ると、柑橘やハーブのような爽やかな香りが加わります。
だからといって、赤から白へ大きく変える必要はありません。
むしろ、
ワインの重心を少し軽やかな方向へ動かす。
そんなイメージです。
例えばロゼなら、しっかりしたバンドールよりも軽快なプロヴァンスのロゼ。
赤なら、凝縮感のあるものより、ボージョレや軽やかなグルナッシュ。
山椒によって料理の香りが立体的になり、それに合わせてワインも”香りを楽しむ方向”へ少しシフトします。

まとめ
ビールも、日本酒も、ワインも。
どれか一つが正解というわけではありません。
違うのは、
料理のどこを楽しむか。
脂なのか。タレなのか。炭火なのか。
そこが見えてくると、お酒選びはぐっと面白くなります。
今年の土用の丑の日は、ぜひワインも一本並べてみてください。
「今日はどの香りを主役にしよう。」
そんな視点で食卓を見ると、いつもの蒲焼が少し違って見えるかもしれません。
食卓を分解すると、ワイン選びはもっと楽しくなる。
それが、この「解析度シリーズ」でお伝えしたいことです。




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